実践講座実践編第2回 「高濃度ビタミンC点滴の値段はいくらにするべきか?」
前回の講座はいかがでしたか?
「必要な情報は相手がすでに持っている」
「「話す」ではなく「聞く」ことにより患者さんに動いてもらう」
という話でしたが、興味深くお読みいただけたかと思います。
上記2つは、
「謙虚になれ」
「患者さんに質問せよ」
と言い換えることができます。
情報があふれている社会では、相手と対等に接した上での質問がカギを握っているのでした。
さて、第2回のテーマは、
「高濃度ビタミンC点滴の値段はいくらにするべきか?」
です。
このテーマを書くことに決めたのは、以下の様な質問を頂いたのがきっかけです。
以下、頂いた御質問より抜粋、一部修正
自由診療の料金の決め方について教えて下さい。
クリニックを構える場所や各医院の経営方針、地域特異性を考慮すると、価格が全国一律に成り得ないとは理解しています。
私は、自由診療の料金について
1 単位時間当たりの単価を決める。
2 材料の原価に係数を掛ける。
これらを合計して出すのが妥当と、先輩医師から教えられました。
そうすると、
例えばビタミンCであれば、21,000~40,000円位になるそうで、
グルタチオン点滴は15,000円、フルキレーションだと180分で36,000円になるようです。
私は○○県の片田舎で開業していますが、とてもこんな料金では患者は集まらないと思っていて、自信がなくて価格設定が出来ません。
しかし、一方では、そのお金に相当する価値があるんだと納得し、受け入れて下さる患者もいるようです。
宮澤先生のクリニックでは、独自の方法や考え方に基づいて、自由診療の値段を決めていると思うのですが、当医院では
自由診療だけをやっている訳ではなく、全体のまだ1割程度の患者にしか提供できていないというのが現状です。
従って、医師としての私が費やせる時間は最小限に留まり、ほとんど、担当者や看護師が対応せざるを得ません。
このような状況において、私はどのように値段を決めるのが妥当でしょうか?
ここまで
上記のような質問は複数の先生方からコンスタントに寄せられる内容です。
「栄養療法の診察や各種検査、サプリ処方、カウンセリングにおける価格をどうやって決めたらよいのか」
「今設定している料金が果たして適正なのか、確信が持てずに不安だ」
このように思っていらっしゃる方が多くいるようです。
これに対して、2章に分けて、私なりの意見を述べてみます。
前置きが長くなりましたが、ここからが本文です。
目次)
1)「コスト戦略」と「付加価値戦略」
2)「付加価値」をつける方法
1)「コスト戦略」と「付加価値戦略」
最初に答えを言います。
先の先生のケースですが、料金の決め方を見ると、ズバリ「ターゲット設定」という視点が抜け落ちています。
先ず一番に考えないといけないのは、”対象顧客をどこに設定するか”ということです。
対象顧客となる患者の極端な例を言えば、
「お金が無いので少しでも安く点滴したい人」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
と、
「金は別にどうでもいいのでとことん治療効果を求める人」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
です。
価格勝負の場合、前者のような患者さんが集まり、内容勝負の場合は後者が集まるでしょう。
飲食店でいえば、吉野家とジョエル・ロブションですね。
(ジョエル・ロブション http://www.robuchon.jp/)
吉野家は、如何に数多くのお客さんに来て貰って回転率を上げるかに注力します。
そのように行った徹底した「コスト」管理が利益を生みます。
それに対してジョエル・ロブションは、「付加価値」を提供し、客単価を高める事で勝負している店です。
ロブションの魅力は、フレンチの最高峰としてのブランド力や洗練されたサービスもありますが、なんといっても、
「いつ行っても感動的な一皿を提供してくれるという絶対的な安定感」
や
「ワインのセレクトも文句なし」
等という評判です。
これらの評判が「付加価値」を作り上げています。
そこで、吉野家のやり方を「コスト」戦略、ロブションのやり方を「付加価値」戦略と呼ぶことにします。
この両者は決して相容れません。
吉野家を好む人に、ミシュランクラスのジョエル・ロブションを強引に勧めた所で対価は支払ってくれないでしょうし、
反対に、ロブションの提供するハイエンドな質を求めている人とって、吉野家はちっとも満足感を与えません。
クリニックの顧客設定も全く同じ考え方で捉える事ができます。
私が、無料メール講座でもお話した、新橋駅前のとあるクリニックでは、にんにく注射が1回500円です。
受付から注射をするまで、全てが流れ作業で、徹底したコスト管理が行われています。
典型的な「コスト」戦略クリニックです。
その一方で、ビタミンC点滴に1回30,000円という値段を掲げるクリニックでは、豪華なソファー、大理石をしいたよう
なエントランスでブランド価値を創造しています。
これも典型的な「付加価値」戦略クリニックです。
「コスト」戦略と「付加価値」戦略、この戦略のどちらを取るのかを決めないと、価格は決まりませんし、お客さんにも
振り回されてしまいます。
先にも言いましたが、この2者は相容れません。
両方の事を同時にやろうとすると失敗する事が多いので、まずはどちらの戦略をとるのか決めてください。
2) 「付加価値」をつける方法
さて、では、果たしてどちらの戦略を取るのが良いのでしょうか。
前者の薄利多売で行くのであれば、通常は多店舗展開、広告に投資などして積極的に顧客のシェアを取っていく戦略が必
要です。
「コスト」削減のため、従業員を多数抱えて、店舗を各地にくまなく展開する戦略を取る事が常套手段です。
高濃度ビタミンC点滴はもはや、特別な治療ではありません
現在、高濃度ビタミンC点滴を行うクリニックは、日本全国に600-700件程度存在します。
「高濃度ビタミンC点滴」でインターネットを検索すると、21万件ものサイトがヒットします。
「高濃度ビタミンC点滴」は、今やレッドオーシャン(血で血を洗う競争の激しい領域)なのです。
このような単純でありきたりな物や手技などは、情報が発達し、料金の比較が出来る今、妥当な価格に収束していくまで
の時間が非常に短くなりました。
単に、「ビタミンC点滴やっています」 というクリニックは価格競争の波にのまれ、ディスカウント価格を強いられるはずです。
患者の立場になって考えてみれば分かりますが、これだけではクリニックの治療方針や独自の提案が何も分かりませんし、自分にとってどんなメリットがあるのか、価値を与えてくれるのかが一切見えません。
この動きは、都心部であれ、地方であれ、場所に関係はありません。
「原価、クリニック場所代、人件費がこれくらいなら妥当だなあ。」
高濃度ビタミンCに関しては、点滴を受ける患者が「コスト」を容易に把握できてしまう時代です。
もう既に、多くの医師、歯科医師がビタミンC点滴を導入し始めています。
対策を講じなければ、価値が下落の一途を辿る事は、決して避けられない事実です。
だから、単独のクリニックで行う「コスト戦略」には限界があります。
これは、ビタミンCでもキレーションでも、サプリ処方でも変わりありません。
「コスト戦略」には、個々の医師・歯科医師が思い描く明確な治療方針や競争的優位性が介在しません。。
だから、ちょっとした外部からの影響で、価格設定や治療方針もブレてしまう可能性があります。
実践講座を受けていただいている先生方にお勧めするのは、やはり後者です。
講座の中では、様々な「付加価値」について学んでいただいているはずですから。
しかも、「付加価値戦略」には限界がありません。
「ビタミンCの性質」、「作用機序」、「臓器の局在」、「治療効果」などを思い出してください。
どのようにビタミンCを使えば良いのか、患者に訴求すれば良いのかのヒントが見えてきます。
そこに、「自分の専門分野」、「得意分野」を掛け合わせましょう。
この視点から双方を組み合わせれば、答えや可能性は無限に広がります。
ただし、「付加価値」戦略でいく場合、どんな付加価値を点滴や治療に付ける事が出来るのかを考えなくてはなりません。
そのためにはサービス内容を一から見直して差別化する必要があります。
同じ内容なのに価格が高いだけなら誰も来ませんので。
「どんな患者さんを対象に、どんな価値をもつ治療を提供できるか?」
これを考えることが最大の問題です。
ビタミンC点滴療法は強力な治療手段ですが、あくまでも1つの手段に過ぎません。
ターゲットとする患者さんに対し、如何にしてその目的達成を手伝ってあげるか。
そして、その上でクリニックに関わる全員が潤うだけの必要充分な利益を取ることです。
(この時点ではじめてご質問にあった料金の決め方が参考になります)
はじめに値段ありきなのではなく、コンセプトが重要です。
ターゲット設定と同時に、治療コンセプトと具体的な治療内容を明示しましょう!
例えば、
「高濃度ビタミンC点滴やってます 」
では、5,000-10,000円の値段です。
しかし、
「 当院では、忙しいビジネスマン向けに、リラックス外来を実践しています。
休暇を取っているのに、睡眠時間も確保しているのに、それでもまだ疲れが残っていませんか?
予約は簡単、診察時間も調整致します。」
というメッセージを謳い、ビタミンC点滴と他のサプリメントを組み合わせれば1回20,000円の価格設定で、尚リピート
患者も期待できるかもしれません。
また、同じ点滴でも、
「アマルガム修復剤を取り除く際に出る、活性酸素を除去する点滴を行っている歯科です。
老化の原因である活性酸素について知りたい保護者の方、お子さんの治療の合間にクリニックスタッフが説明致します。」
ということなら、自費診療でも多くの患者さんの関心を集める事が可能でしょう。
同じように、
「キレーション治療やっています」
ではなく、
「リウマチの根本治療をやっています。
リウマチに対するキレーションの有効性を確かめつつ、貴方の身体の状況に合わせて治療計画を一緒に練りましょう。
治療費は少し高めですが、キレーションに対する質問、疑問には何でもお答えします。
なるべく薬に頼らない方法で、痛みに悩まない生活を目指しましょう。」
または、
「腸内環境を改善します」
ではなく、
「うつ病は心の病だとばかり思っていませんか?
第二の脳と呼ばれる腸管を改善することで、あなた本来の心と身体を取り戻すことが期待できます。
本気でうつ病を治したい方を当クリニックでは全面サポートします!」
ではどうでしょうか。
どんな患者を対象とし、どのような考え方に基づいて、如何に価値ある治療が可能か
これが決まれば、上記のようなプレゼンテーションはいくらでも思いつきます。
要は、想像力の問題です。
想像力を働かせるためには、基本のインプットの量と、そして、物事を俯瞰的にみる力が欠かせませんし、何よりも治療の実力が必要です。
私は、これらを総合して、「提案力」と呼んでいます。
患者さんがその治療についての話を聞いた時に、
「自分がその治療を受けた後の姿を頭の中に容易に想像できるようにさせてあげること」
これができれば、値段は後からついてきます。
これからの世界、誰からか価値を与えて貰っているだけでは、その誰かが倒れれば共倒れですし、単純に同業者が増えれば価格破壊が起きます。
だから、自分にしかない価値、自分だからこそ提供できる治療プランを創造していくことが必要になります。
・自分が提供できる「付加価値」はなにか?
・それが誰の役に立つのか?
・どうすればより多くの人の役に立てるのか?
これを考えてください。
・歯科医が行うビタミンC点滴
・脳外科が行うビタミンC点滴
・精神科が行うビタミンC点滴
・インプラント専門医が行うビタミンC点滴
・がん専門医が行うビタミンC点滴
同じ治療でも意義は全く異なるものになるはずですし、
コンセプト設計や打ち出すメッセージ、価格設定も違ってくるのが当然です。
良かったらこちらも参考にして下さい。
高付加価値、高価格の典型例です。
『よそより10万円高くても お客さんが喜んで買う 「町の電器屋さん」が大切にしていること』
http://p.tl/zWZM