実践講座実践編第1回「必要な情報は相手がすでに持っている」

私が普段診療を行っているのは、東京都葛飾区という東京23区の中でも1,2位を争う偏狭の地域で、決して交通の便がいいとは言えないところです。

都内ですが、東京駅からは電車を乗り継いで30分以上かかります。

しかし、海外を含む全国から、副腎疲労や慢性疲労、関節リウマチの患者さんにお越しいただいています。

(クリニックの近くにホテルがないとお叱りを受けることも多いですが)

来院された患者さんの殆どは、根本原因を探る検査を行います。

例えば、この半年で尿中重金属検査は70件以上、全て含めれば200件以上の様々な根本原因を探る検査を行っています。

もちろん、そのほかにも問い合わせは毎日あり、アドバイスだけをする人もいれば、他の先生をご紹介する人もいます。

私が栄養講座を主催させて頂いているのは、一重にこれだけの経験によるものと考えております。

「考え方編」の中で、このように書きました。

「臨床に根ざしていない生化学的な概念は何の役にも立たないし、基礎的な生物の原理に基づかない診療行動は底が浅い」

基礎と応用はどちらも大切であり、相補的に働きます。

この講座は「基礎(生物の基本原理)」をテキスト配信で、「応用(実際の臨床)」をご自身の検査結果データを用いた勉強会

でカバー出来るように設計されています。

症例検討会に4回出た方は、20-30件以上の実例を目にする事ができるはずです。

初めてこのような治療をとりいれた先生が、20-30件の症例を積み重ねるのに1年はかかると思います。

だから、この勉強会を終えた先生は、ある意味この治療のエキスパートになっているわけです。

あとは、実際に患者さんに対して治療を行うだけですね!

そのために必要な力が、「提案力」です。

この実践編は、患者さんに対する治療提案編と言い換えることもできます。

「患者さんに対して治療を提案して、受け入れてもらうこために必要な事」がテーマです。

これをマスターするためには、純粋な医療としての知識以外に、

「コミュニケーション能力」

「人の心をつかむ能力」

「人を動かす能力」

「機転と応用力のスキル」

「引き出しの多さ」

「患者目線に立ったニーズの把握」

「マーケティング&セールスの知識」

などが必要となってきます。


私は、実践を積み患者さんからのフィードバックを受けることによって、臨床能力をあげることが必要と考えています。

だから、このような事もプログラムに組み入れています。

しかし、この講座を受講されている方の中には、純粋な分子栄養学の学問以外は興味がないという方もいらっしゃるでしょう。

そのような方々にはお役に立てにくい内容かもしれません。

その場合、今後配信される実践編のメールは読み飛ばして頂くようお願いいたします。


さて、第1回のテーマは、

1. 「必要な情報は相手がすでに持っている」

2. 「「話す」ではなく「聞く」ことにより患者さんに動いてもらう」

です。

1. 「必要な情報は相手がすでに持っている」

私が始めて車を買ったのは、19歳の時でした。

お金がなかった私と大学時代の友人がたまたま近くに住んでいたので、共同で中古車を買おうということになりました。

2人で30万円以内という予算の中で、私は「カーセンサー」を見てめぼしをつけ、浦安のディズニーランドの近くの中古車センターに行きました。

私が、29万円の5年落ちの日産マーチの内装をチェックしている時、友人はすぐそばに置いてあった、同じく29万円のサバンナRX-7に夢中になっていました。

RX-7はちょっと見た目はかっこいいスポーツカーですが、11年落ちで、しかもシートやハンドルはかなり年季が入っており、一見してやばそうだと感じました。

しかし、友人のひとめぼれを拒むことはできず、押し切られてそのクルマを購入しました。(諸経費込み42万円)

そのときはよかったのですが、翌日クルマを走らせている時にアクシデントが起きました。

赤信号で交差点の30m手前で止まろうとしたとき、ブレーキが利かなくなったのです。

結局、停止線を過ぎて、交差点のど真ん中に止まる事ができ、ほっとしました。

中古車店に文句を言ったのですが、ブレーキの効き具合はそのときは正常に戻っており、受け入れられませんでした。

その後、先輩の知り合いの車やさんに相談しにいったら、

「これ事故車だね。相当いっちゃってるよ。よくこんな車買ったね!」

等と言われてしまいました。

修理に購入費用以上の料金がかかったことは言うまでもありません。

中古車の厄介なところは、そのクルマが欠陥車なのか、素晴らしい車なのか、売り手しか知らない点です。

買い手には一部知らされない情報があります。

しかし、近年、この買い手の情報不足はすごいスピードで改善されつつあります。

まず、希望の車種を「カーセンサーネット」で検索する事で、価格の比較を一瞬ですることができます。

クルマの本体価格だけでなく、諸費用まで明確に記してある販売店も多くあります。

販売店のめぼしがついたら、次は、「カーセンサーネット」で中古車販売店のクチコミをチェックするのです。

今や、クルマのスペック、性能などについて、ディーラーのセールスマンよりもお客さんのほうが詳しいということは、めずらしくありません。

多くのお客さんはディーラーに来る前からあらゆる種類の情報武装を行っています。

医療も例外ではありません。

当院へのメールの相談例(中身は一部変えてあります)をみてください。

「 25歳の女子です。

  遅延型食物アレルギーで、卵、乳製品、イーストなどに反応がでています。

  喘息も治療中です。

  食欲がありません。

  生理は安定しています。

  食物の除去食で下痢はよくなってきていますが食欲がありません。

  腸内環境やカンジダ感染等について精査、治療をお願いします。    」

「 何年か前にステロイドを服用してから疲労、首筋の凝り、頭の痛み、むくみ、体重増加などの症状が続いています。

現在は鍼灸治療、軽い運動、食事、個人で購入したパントテン酸などで少しずつ改善はされてきていますが、なかなかスッキリせず疲れは毎日あります。

体調を崩してからは体力もかなり落ち、精力も減退しています。

DHEAのサプリメントを自分で購入しようか考えています。

本当にDHEAが足りていないのかもハッキリわからないまま、自分自身で様子を見ながらの服用というのは危険なのでしょうか?」

「 H25年1月中旬、長距離ウォーキングを始め、その後、竹踏みを行うようになってから、両足指(MP関節)に荷重時痛出現。

2月に入ってからは、朝起きた後、痛みにより歩行障害をきたすようになる。

3月に入っても痛みは治まるどころか、両手指に朝のこわばりが出現するようになり、少しDIP、PIP関節に腫脹と痛みを認めはじめた。

症状は完全にRAだと思われますが、自分勝手に、竹踏みなどによる足指(MP関節)外傷を契機とした感染だと考えていました。

私は「関節リウマチ」なのでしょうか?  」

多くの患者さんは、相談の時からすでに多くの情報を持っています。
場合によっては、はっきりとした治療の希望、方向性を持っています。

つまり、「必要な情報は相手がすでに持っている」のです。

歯科も事情は同じでしょう。

例えば、歯科で使用するインプラントのメーカーとそのシェア
http://www.identalclinic.jp/maker.html#maker_link01

例えば、格安インプラントの利益構造
http://www.diamond.co.jp/magazine/20243061513.html

ネットや雑誌でこのような情報は簡単に手に入ります。

他の業界と同様に、医療においても、売り手側の情報優位性はとっくの昔に失われています。

「自分達は専門家だ」という姿勢で、一方的な指示をする事はもはや通用しません。

では、どのようなアプローチが効果的なのでしょうか。

2. 「「話す」ではなく「聞く」ことにより患者さんに動いてもらう」

それに変わり、今必要とされているのは、

① 患者さんの目的を引き出す事

② それを考慮した診療の提案をする事。

です。

一歩下がって、患者さんを仲間に引き入れる必要があります。
上に上げたお問合わせメールでもおわかりのように、患者さんは自分の事を、こちら以上に良く理解(認識)なさっています。

医療は、医療に費やす時間、食習慣、努力そして医療費などの患者さんのもつ様々な資源を差し出してもらわなくては成り立たちません。

だから、実は医療には「人を動かす手腕」とてつもなく関与します。

「人を動かす」というと聞こえは悪いですが、これが成功すれば患者さんの利益は計り知れません。

「人を動かす唯一の方法は、その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやることだ。」

 「人を動かす」デール カーネギー 著(ビジネス書の中でも古典で、最も有名な本)

「尿中重金属検査やりましょう」という言葉だけでは何も生みません。

副腎疲労を直したい人に、例えば、その病気の原因に重金属が関わっていることを教えてあげましょう。

水銀が体内のミネラル輸送障害を来たし、それが生体でどんな問題を引き起こしているか血液検査と照らし合わせてあげましょう。

或いは、アマルガムが体内で気化された結果、どのような症状を生じさせているか、
患者の症状とリンクさせて、分かりやすく説明し、場合によっては、医科よりもまず歯科領域から着手する事が根本原因の解決に繋がると伝えてみましょう。

患者が希望している事や潜在的に期待しているが気付かない事を、互いの会話の中から治療家が上手く引き出してあげることで、患者は自分の目的に向かって自発的に動いてくれるはずです。

そうすれば、こちらがなにも言わなくとも、その人は検査を希望されるでしょう。
     

患者さんが何を望んでいるのか。

それが一番の問題です。

大事なのは質問です。

質問をしてください。

え? 具体的には何を聞けばいいか?

私が必ず聞いているのは次の2つです。

「なぜ当院にいらしたのですか?」

「今までの治療のどこが不満なのですか?」

私の「キラー・ワード」です。


今回のコンテンツは、以下の書籍、コンテンツを参考にしています。

「人を動かす」        デール・カーネギー

http://p.tl/olZ4

「人を動かす、新たな3原則」 ダニエル・ピンク

http://p.tl/cdKV

「影響力の武器 」      ロバート・B・チャルディーニ

http://p.tl/8rrf

「影響力の使い方講座」    ロバート・B・チャルディーニ

http://123direct.info/tracking/af/583480/D0VtgwGy/

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